2013年8月20日火曜日

「ランサーズ、The Startupに対して言論統制」全文

元記事は下記。
http://thestartup.jp/?p=8240

消えているので全文掲載。
追記:アクセスが多すぎて見れないときがあるだけみたい。上記元記事が見れない時は下記をどうぞ。



メディア論として皆さんに意見を聞いてみたいので、リスクを承知で敢えて書いてみます。本誌のクラウドソーシング狂想曲:クラウドワークス vs ランサーズという記事が業界で物議を醸したらしいという話を耳にしています。この記事は私の周りのクラウドソーシング利用者やフリーランスのエンジニアやデザイナーにヒアリングした結果を元に、ポジショニングマップを作成し、その点や私が「クラウドワークス優位」と断言した点に注目が集まったようです。

この記事に対して、ランサーズ側からこんなメッセージをいただきました。



表記ミス(たまにやってしまいますが…)以外で「内容の修正」を求められたのはThe Startup始まって以来のことです。上記に関しては「独自に調査しており、修正するつもりはない」と私は返信しております。どの内容に修正、という点は突っ込まなかったのですが、おそらく下記の図に関してでしょう。



私自身、ランサーズは発注主として利用したこともあり、ランサーズタスクなど単価の低い分野に強い印象を持っていました。一方でアプリ開発などの高い案件はクラウドワークスの方が多く、そうした仕事を手掛ける受注者もクラウドワークスの方が多い。周囲でけっこう聞いたのですが、そんな感じでしたね。

当該記事は既に「ランサーズ」単体ワードで検索結果の10位以内に入っていると思われ、事業運営上不利になると思われたのでしょうか。5月のリリースに対して、3ヶ月後くらいにメッセージがきましたね。

もはやランサーズに対して云々いうつもりはないのですが、今回のような「自社に不利な記事に対して圧力をかけて修正を依頼する」すなわち、言論統制と捉えて差し支えないと思いますが、メディアと言論統制の問題について一石を投じてみたいと思います。

根拠なきリスクを負ってまで、批判記事は書かない


この手の圧力に対して、よくありそうなメディアの対応が「言論の自由を侵害された!」的な反応かと思います。言論の自由という表現は私は好ましく思っておらず、あることないこと書いていいという訳ではないと思っています。根拠のない誹謗中傷など、いくら言論の自由を主張して報じても意味がありません。メディアとしても根拠のないことを報じるほどリスクは取りません。

当然、事業者としては自社に不利な記事が世に出るのは避けたいところでしょう。しかしメディアが事実や意見を述べることに対して、自社に不利な情報だからといって圧力をかけることは許されることなのでしょうか。メディアはその圧力に屈していたのでは、ジャーナリズムもクソもあったものではありません。

本誌は事業者にとって都合のいいことだけを報じる広報誌ではありません。今後も事業者にとって痛いであろう厳しい記事はどんどん出していきます。主張しておきたいのは誹謗中傷ではなく、歪んだ事実や構造を報じることで読者にその事象について思考する一石を投じたい。もしくは私個人の意見を発することでその論点について考えてみてほしい。という想いがあります。

今回の件は周囲のヒアリングを元にしたポジショニングを元に「クラウドワークスが勝つ」という意見を表明したまでです。上記でいうと後者にあたりますね。同様の個人の意見によって論点をあぶりだした記事の例としては、下記のような記事がありますが、特に圧力は受けておりません。


ビジネスSNSのintelyが一刻も早く撤退すべき理由

赤字決算を報じて数字を取っているメディアもありますが、事実なので事業者側は反論の余地はないでしょう。私は「赤字ですね!わーい^^」という記事を書くことに意義を見出せないので、赤字報道は一切やらない方針です。決算のような定量的なファクトなだまだしも、ヒアリングなどによる定性的なファクトに基づくものはアンケートを実施したとしても「恣意的な結果に誘導している」というツッコミなども入ることが想定され、いくらでも反論できそうですよね。

The Startup自体は目利き力を標榜しているメディアでもあるため、勝敗予測などで目利き力を誇示することには意味があると思っています。ストレートニュース中心のメディアではわざわざポジションを取るリスクを背負いたくはないでしょう。将来的にはThe Startupでポジティブに紹介されることで事業が成長するという予言実現力のあるメディアと認識されたいと思っております。

ジャーナリストは「いい人」には務まらない


今回の記事をリリースする際に、複数人の友人に意見を聞いてみました。迷いがなかったといえば嘘になります。「そんなことわざわざ書かなくてもいいのに!」「ひどい!」「ランサーズかわいそう!」と友人たちにも言われました。「いい人」にこんな記事を書けるわけはないとつくづく感じます。

しかし、言論統制の圧力を受けた事実を報じ、世に問いたいと思いました。市場はどう反応するでしょうか?お前の意見の定性的な根拠が乏しい、という意見が最も想定されますが、意見を述べただけで言論統制を受けるのでしょうか。言論統制というほどのものでもないだろうという意見も想定されますが、わざわざFacebookメッセージで署名に「弁護士」と付けてくるあたり、そういった圧力を感じました。名誉毀損だ、誹謗中傷だ、売名行為だとも言われるリスクはあるでしょう。

そんなくだらない攻撃のためにこんな記事はわざわざ出しません。メディアに対する事業者の言論統制に関して、ぜひ皆さんの意見を伺えればと思います。ぜひ記事を「いいね!」ではなくFacebookなどで「シェア」して議論してみて下さい。私に対する意見もお待ちしております。

The Startupも言論統制を受けるほどのメディアになったかと思うと、感慨深くもありますね。