2022年7月27日水曜日

国際言語学オリンピックのキリヴィラ語の問題を解いてみる

なんだこれは?

どうもキリヴィラ語というのは実際に存在する言語っぽいね。ただ、この問題、語学検定的な何かではなく、もはや暗号解読の問題に近いような気が。シャーロック・ホームズの「踊る人形」みたいな。

ちょっと興味深かったので解いてみようかなと思う。まずは問題文を書き出す。

1.一人の男性がこれらの四匹の魚を捕まえる。
Bibani navasi yena minasina tetala tau.
2.この白人の男性が到着した。
Lekota dimdim mtona.
3.その子供が到着する。
Bikota gwadi magudiwena.
4.この年配の女性がそれらのカヌー(複数)を見た。
Legisi waga makesiwena namwaya minana.
5.どの男性が二頭の豚を殺したか?
Amtona tau lekalimati nayu bunukwa.
6.年配の女性たちが二人の男性を世話した。
Leyamatasi teyu tauwau nunumwaya.
7.その賢い女性が何かを見る。
Bigisi kwetala vivila minawena nakabitam.
8.何匹の犬が到着したか?
Navila ka'ukwa lekotasi?
9.酋長たちがどのカヌーを見たか?
Amakena waga legisesi gweguyau?
10.その美しい子供がこの石を見た。
Legisi dakuna makwena gwadi magudiwena gudimanabweta.
11.それらの白人の男性がいくつの物を食べたか?
Kwevila lekamkwamsi dimdim mtosiwena?
12.賢い酋長が一頭の野生の豚を殺した。
Lekalimati natala bunukwa nagasisi guyau tokabitam.
13.何人の女性がこの男性を世話するか?
Navila vivila biyamatasi tau mtona?

次に、気づいた順に単語訳(判断根拠はカッコ内に記載)と法則を書き出していく。
Legisi:見た(4と10の共通語がLegisiであり「見た」なので)
この言語はV(Verb、動詞)から始まるっぽい(上記から通常文でLegisiから始まったので)
Bigisi:見る(上記を踏まえて7から)
Lekota:到着した(上記を踏まえて2から)
Bikota:到着する(上記を踏まえて3から)
過去形はLe、現在形はBiから始まる。もしくは時制(LeかBi)+動詞原型で動詞が構成されている(上記LegisiとBigisi、LekotaとBikotaの法則性から)
Bibani:捕まえる(上記を踏まえて1から)
Leyamatasi:世話した(上記を踏まえて6から)
Lekalimati:殺した(上記を踏まえて12から)
waga:カヌー(4と9の共通語が意味が判明しているLegisi以外のものがwaga)
通常文の語順はVOS(動詞、目的語、主語)の可能性(4で意味が判明したLegisiとwagaの語順から)
legisesi:疑問文中の「見た」の語形変化?(9で4のLegisiに似た単語があることから)
guyau:酋長(12と9の共通語が酋長でスペルが似たものであり通常文の単数形が12の方なので)
bunukwa:豚(5と12の共通語が豚でスペルが共通しているのがこれ)
Navila:何人、何匹(生き物の数量)(8と13の共通語であり11では使われていないので生物の数を尋ねる際の単語と推測できる)
vivila:女性(7と13の共通語なので。4と6には登場しないので年配の女性には使われない単語と推測できる)
biyamatasi:世話する(13と6の共通語で過去形はle、現在形はbiが使われる法則を当てはめると、既知のLeyamatasiから導出できる)
dimdim:白人男性(2と11の共通語から)
tau:男性(1と13の共通語から)
mtona:この(2と13の共通語から)
gwadi magudiwena:その子供(3と10の共通語から)
nayu:二頭(5の残りの単語と意味が判明している豚bunukwaの近くに修飾語が付くであろうという推測から)
natala:一頭(12で5と同じ箇所に豚の数を表す修飾語が付くであろうという推測から)
tauwau:男性の複数形(tauが男性で6の語形が似ているものから推測)
teyu:二人(6の残りの単語で豚の数と同じ場所に人の数の修飾語も付くであろうという推測から)
tetala:一人(1の残りの単語で6と同じ場所に人の数の修飾語も付くであろうという推測から)
上記からtalaが1、yuが2を意味し、teが人数、naが生き物の数を意味するという推測ができる
tokabitam,nakabitam:賢い(12で残りの不明単語はnagasisiとtokabitamでどちらかが野生か賢いになるが、位置的に豚を修飾できるのはnagasisiになるはずなので、残りのtokabitamが賢いになる、7から語形が似ているものを選ぶとnakabitamも賢いになる)
nagasisi:野生の(上記推定から連鎖的に確定)
nunumwaya:年配の女性たち(6の残りの単語がこれだけなので)
namwaya:年配の女性(4の残りの単語と残りの修飾語の位置関係と、nunumwayaと似た語形から推測)
minana:この(女性形)(4の残りの単語で2と同じ位置に「この」があると推定されることから)
男性の単数形がtau、複数形がtauwau、年配の女性の単数形がnamwaya、複数形がnunumwaya、酋長の単数形がguyau、複数形がgweguyauとなっていることから複数形が存在する言語っぽい(豚やカヌーなどないものもある)

大まかには言語体系が掴めてきたっぽいので、これを踏まえて問題を解いていく。キリヴィラ語を日本語に訳せということなので、キリヴィラ語の問題の下に日本語訳の答えを書いて、さらにその下のカッコにその日本語訳に至った根拠を書いてみた。


14.Navila vivila biyamata tomwaya mtona?
何人の女性がこの年配の男性の世話をする?
(tomwayaは訳文に出て来ない単語だが、年配の女性を意味するnamwayaと語形が似ており、男性を修飾する「この」を意味するmtona(女性はminanaで修飾される)があることから年配の男性と推測)


15.Bikamkwamsi kweyu vivila minasina.
これらの女性が何かを食べる。
(kweyuは訳文には出て来ない単語だが11の「いくつの物」を意味するKwevilaと7の「何か」を意味するkwatalaと語形が似ており、kwevilaとnavilaはともに数を表す言葉であることを踏まえると、漠然とした「物」を意味していると推測できる)


16.Amagudina gwadi lekota?
どの子供が到着したか?
(gwadi magudiwenaで「その子供」だが名詞の後に修飾語が来る傾向からgwadiはおそらく子供。Amagudinaは訳文には出て来ない単語だが、語形が似ている5のAmtonaと9のAmakenaがどちらも「どの」であることを踏まえるとAmagudinaも「どの」の語形変化である可能性が高いと判断できる)


17.Tevila tauwau bigisesi gugwadi gudigasisi?
何人の男性が美しい子供たちを見るか?
(Tevilaは訳文には出て来ない単語だが、語形が似ているNavilaもKwevilaも数を表す疑問詞であることから次に来る男性の複数形を意味するtauwauの数を聞く疑問詞と推測ができる。bigisesiは9のlegisesiの現在形と推測できるので、疑問形の「見るか?」と推測でき、gugwadiは「子供」を意味するgwadiと語形が似ており、「酋長」のguyauと「酋長たち」のgweguyauの関係から鑑みるに、gwadiの複数形と推測ができるのでgugwadiは「子供たち」と判断。gudigasisiは訳文には出て来ない単語だが、本文中で語形が似ているのは10の「美しい」を意味するgudimanabwetaか12の「野生の」を意味するnagasisiで、意味が通る方だと「美しい」になるのでgudimanabwetaの語形変化と判断した)


18.Legisesi ketala waga vivila minasiwena.
それらの女性が1つのカヌーを見た。
(Legisesiは9より「見た」、ketalaは訳文には出て来ない単語だが1のtetala「一人の(男性)」や12のnatala「一頭の(豚)」などから「1つ」を意味するtalaに名詞別の接頭辞が付いたものと判断、minasiwenaは訳文には出て来ない単語だが共通性を探ると、wenaが含まれる3のmagudiwenaは「その(子供)」、4のmakesiwenaは「それらの(カヌー)」、7のminawenaは「その(女性)」、10のmakwenaは「この(石)」、10のmagudiwenaは「その(子供)」、11のmtosiwenaは「それらの(白人男性)」となっており、siwenaが「それらの」、diwenaが「その」を意味していて、それに女性や男性など対象による語形変化が接頭辞になっていう法則性っぽいと判断)

 

とりあえずここまで!さすがに時間掛かりすぎて、(a)の日本語訳問題だけで力尽きたわ。これらの問題を試験で何分掛けて解くのか知らんが、まぁ時間内には全然解けないだろうね。

もしこの道楽で書いた記事にアクセスがめっちゃ来たら(b)を解いてみてもいいけど、その場合はもうちょっと文法の理解度を上げる必要があるだろうね。

疑問文とか数詞やら修飾語やらの語形変化(接頭辞や接尾辞)の法則性の把握は、まだ改善の余地がありそうだし、日本語からキリヴィラ語訳を作ろうとしたら、この辺の把握度を上げる必要があるだろうね、おそらく。