自国通貨が安くなって良いことは1つもない
前に国会でひどい答弁をした慶応の准教授の小幡氏の記事を読んでみたら、やっぱり今回も説得力
が皆無すぎて引いた。ドン引き・・。彼の主張を追ってみる。
▼円安は交易条件が悪くなる
交易条件ってのは輸出品一つと輸入品いくつを交換できるかというような意味。まぁこれ、つまり
円安の定義とほぼ同じだよね。今まで1ドルを80円で買えたのに、最近は100円出さないと買えなく
なっちゃったという。
▼通貨は国力。円安はすなわち国力が弱くなるということ
う~ん、国力の定義ってなんだい?円の強さ=国の強さということならこの主張自体はトートロジー
で特に意味は無い。
▼自国の通貨が高くなると生活水準が上がる
これねぇ、実際円高経験して、生活どうだったかね?確かに牛丼とか安くなったんだけど、安く買える
ということは、それを売っている企業の売上も減って、結局我々の給料も減ってというのが今回経験
した出来事だったよな。
物価が上がる→企業の売上が上がる→給料が上がる
のスパイラルのほうが
物価が下がる→企業の売上が下がる→給料も下がる
のスパイラルより健全じゃないか?物価が若干安くても生活が良くなった感はまるでなかったよな、
今回経験した円高は。
▼世間に浸透している誤解。それは日本が輸出に依存しているという誤解。
う~ん、どうなんだろうね。韓国と比べたら、そりゃ人口は多いし、あそこまで輸出に依存はして
いないんだろうけど、日本の主たる企業にとってどれだけ海外売上が重要なのかちょっと見てみるか。
円高でヤバかったのは、大企業がバタバタ潰れたり、瀕死に陥ったりしていたことで、連鎖してその
企業に紐づく中小企業もバタバタ潰れていったのが問題だったのであって、その辺を観ないと。
キーエンスに行った知人が、たしか日本の製造業はトヨタを中心に回っているとか言っていたので、
トヨタは入れて、あとソニーと任天堂あたりを調べてみようかね。
まずはトヨタ。売上の良い感じの資料がなかったので販売台数の資料で代用。
ほとんど海外じゃねーか!880万台の販売のうち国内分が220万台ってことは、台数ベースで言えば、
国内比率25%だぞ。
続いてソニー。
えーと・・2011年度の全体売上は6.4兆でそのうち日本は2.1兆なんで、ざっくり国内比率33%。
ここも海外比率高いな。
任天堂。これも、売上比率の良い感じの資料がないから、一番売れてる3DSのハードとソフトの
販売台数比較でいいよね?傾向を知りたいだけだし。足すの面倒いから3Qの比較でいいや。
3Qのハード売り上げは全体で760万台くらいで国内が290万台。ソフトは全体で2000万本で国内は
900万本。ハードの国内比率はざっくり40%で、ソフトの国内比率はざっくり45%。ここも海外比率が高い。
ということで、日本の主たる企業の3社を超ざっくり調べてみたけど、いずれも海外の売上比率が
非常に高いことがわかった。これやっぱり円高やばくね?だって1ドルで商品売ってたとするじゃん。
今ならその売上が100円になるのに、以前は80円にしかならなかったってことでしょ?利益が2割引き
ってことだよ。自分の給料が30万だとして、そのうち20万円分は外貨でもらっているとすると、
今の1ドル100円相場で30万もらっていたのが、1ドル80円相場だと26万円になってしまうってことでしょ?
ここまでインパクトがあったら利益率の低い企業はそりゃ潰れるだろうし、輸出割合が多い企業も
潰れるでしょ。だって海外企業との競争に勝てなくなるもの。輸入している企業は値上げをすれば
いい話だけど、輸出はそうは行かないものね。
ということで、日本が輸出に「依存している」というとそりゃ言い過ぎだけど、日本の製造業を回して
いるような主たる企業の海外売上比率が高い以上、彼らの業績が悪くなると関連する国内企業が
潰れるわけだからやっぱり円高まずくね?
他もひと通り見たけど、ちょっとこの人の主張、私は全く納得出来ない。少なくともあの円高時の
不幸・不況が何故起きたのかを説明できていないし、円安でいいことなんて一つもないと言い切れる
時点で、つい最近起きた円高のときに彼は何を見てきたのかと小一時間問い詰めたくなる。
う~ん、なんでこの人が慶応の准教授になれたのだろう。それがやっぱりわからない。
説得力の欠片すらなかった、小幡氏の参議院予算委員会公聴会の動画はこれ。長いから興味が
ある人だけ見ればいいと思うけど、ざっくりまとめると、最初の小幡氏が主観たっぷりのレベルの低い
公述をしたあとに、第一生命研究所の人が説得力のあるアベノミクス賛成の公述をして、最後の
経済評論家の上念氏がアベノミクス賛成の秀逸なプレゼンをしたという内容。
別にアベノミクス賛成か反対かはどっちでもいいのさ。説得力のある、納得できる根拠をつけて話が
できるかどうかが重要で、小幡氏は話し方云々以前に根拠薄弱な答弁をしていたそのことの方が問題。