2015年4月23日木曜日

村上春樹氏の言う「身銭を切る」とは痛い目を見るということ

感受性の磨きかたを教えてください 村上さんにおりいって質問・相談したいこと
あー、これ読んでわかったが、今まで村上春樹氏が言っている「身銭を切る」の意味を誤解してた。
てっきり自分のお金を使って何かをしなさいという意味だと思っていたら、「実際に痛い目を見ろ」
ということなのね。上記は「感受性の磨き方を教えて下さい」というかなり漠然とした質問をしてきた
18歳の女子大生に対し、以下のように回答している。
感受性を磨くためにはどうすればいいか? とても漠然とした質問なので、僕の回答も漠然としたものになってしまいます。感受性を身につけるためには、努力が必要です。何かがほしいと思ったら、こちらも何かを差し出さなくてはなりません。大事なものがほしければ、大事なものを差し出す必要があります。ただほしいと思って身につくものではありません。僕はそれを「身銭を切る」と表現しています。もっと簡単にいえば、「痛い思いをして、身体で覚えていくしかない」ということです。ある程度痛い思いをしないと身につかないことってあるんです。
なるほどね。No pain, no gain.か。様々な痛い目を見てきたからこそ、18歳時点の村上春樹氏は
書くような題材がなかったけれど、29歳になった村上春樹氏には書く題材ができたということらしい。

高校時代の現代文の先生が言っていた言葉が印象に残っていて、「作家は幸せになってはいけない」
という言葉なんだけど、この村上春樹氏の言っていることに通じるものがあるな。その現代文の先生は、
ドストエフスキーの例を出していて、彼は最初はロマンチックな作風の作品を書いていたんだけど、
シベリアで穴を掘っては、その穴を埋めるような、つまり誰のなんの役にも立っていない無意味な労働に
刑として従事させられることで、人間としての尊厳を破壊されるという経験をし、その結果、作風が
ガラリと変わり、現在の大作家としての評価を得る作品をいくつも世に出すに至ったとのこと。

これなんか完全に「身銭を切っている」よね。村上春樹氏の表現を使えば。

でもそうは言ってもねぇ・・身銭を切るとか、パッとは思いつかないよなぁ。ろくなものが思い浮かばない。

・風俗で働いて客からHIVの病気をもらう
・アムウェイの商品を大量購入した上で、友達に片っ端から勧めて友人もお金も失う
・秋葉原できれいなお姉ちゃんに捕まって、イルカのラッセンの絵をローンで買いまくってローン地獄に陥る
・創価学会に入って、選挙のときに知人に片っ端から公明党に入れろと学会活動をし、友人を失う
・声優やミュージシャンになると言って素質もないのに夢を追いかけ、三十後半までフリーターを続けてから夢が叶わないことを知り、絶望感を感じながらフリーターを続ける
・イスラム国の現状をこの目で観ようとトルコ経由でシリアに入り、接触に成功するも、捕まってオレンジ色の服を着せられて日本の首相になんか呼びかけをさせられるも、当然助けてもらえず首を切られて死ぬ
・おれおれ詐欺に引っかかって数百万を失う
・歌舞伎町の勧誘に引っかかってぼったくり居酒屋に入り、数十万の請求をされるも、警察に行っても助けてもらえず、警察の無能さを恨みながら数十万をボッタクりやろう達に払う
・自分の運営している飲食店で、バイトが食洗機の中に入っているところを撮ったものをツイッターに上げるいわゆるバカッターをやったおかげで店は炎上し、接客ができない状態になり店が潰れるもバイトは全く反省せずに普通に学校生活を送っている
・麻薬にハマって刑務所に一度入るも、シャバに出てもやめられず、何度も刑務所に戻る

・・・なんかいくらでも出てくるけど、ホントにろくなものがないな・・。何一つない・・。というか、
取り返しの付かないものが多すぎるだろ・・。この中のどれかをやって「身銭を切る」くらいなら、
作家になんてならなくていいんじゃないかと思えてきた。普通に平凡な幸福が欲しいわ。


おっ、なんか似たような質問をした人がいて、回答が来ている。
不幸じゃないと文学は極められない!? 村上さんにおりいって質問・相談したいこと
大学の文学の先生から「不幸じゃないと文学は極められないぞ」 と言われて、どうなんでしょう?
と質問をしている女性に対する回答が下記。
不幸や痛みは、いわば人生の香辛料のようなものです。たしかにそういうものがまったくないと、人の哀しみや痛みもわかりませんし、たぶん小説みたいなものも書けないだろうと思います。でもだからといって「幸福になってはいけない」ということはありませんよね。小説家がむずかしい顔をしていなくてはならないというのは、無意味な思い込みだと僕は思います。

だいたい文学をきわめるって、どういうことなんでしょうね? 楽しさも、ウキウキも、文学の大事な一部だと思うんですが。
う~ん、身銭を切りつつも幸せを目指すって難易度高そうだな。まぁでも村上春樹氏が不幸っぽい
かというと、読者への返事を見ている限りはそんなこともなさそうだし、別に不幸を背負い続けるのが
よい小説を書く絶対条件というわけではないのだろう。


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