造船太郎がMEGA BIGで2.2億円当選させたという話を「嘘だ」とか、「エビデンスを示していない」とか言っているコメントを結構見かけたので解説を試みようと思う。
そもそもこの話、ニュースとしては知ってたんだけど、当初はあまり興味なかったし、 MEGA BIGがどういう性質のくじなのかも知らなかったのよ。
ただ、青汁王子の動画「MEGA BIGで2億円を当てた大学生が儲けのカラクリを教えてくれました。」を見たときに、「造船太郎は嘘を付いている」だの、「エビデンスを示していない」みたいなコメントをちょいちょい見かけて、「そう思うなら計算してみればいいじゃん」と私は思ったので、この記事を書こうと思ったわけよ。
最初にMEGA BIGの仕組みから
まずはMEGA BIGの仕組みから。これは該当日に開催される12試合の結果に関する数字を12個全部当てることを目指すくじ(MEGA BIGの説明ページ)。
ポイントを整理すると下記の通り。
・試合結果は1試合の合計得点数を元に4通りに分類される
・12試合の数字の組み合わせは我々が予想するのではなくコンピューターがランダムで選ぶ
・単価は1口300円
・当選金の分配はほぼ1等に分配される(当選金の70%が1等に)
くじの見本はローソンのサイトにあったけど、上記は3口買った例だね。コンピューターがランダムに選んだ12試合の結果に関する数字の組み合わせを3口分買った状態。
MEGA BIGの当たりやすさを計算してみる
次にMEGA BIGの当たりやすさってどれくらいあるの?という話。多分ここを理解するのが1番重要。
まず、1試合を当てる確率は1/4なわけよ。1試合の合計得点数が1以下なら1、2点なら2、3点なら3、4点以上なら4、の4通りなので(厳密には各数字のでやすさに違いはあるかもだけど)。
そうすると2試合を当てる確率は1/4x1/4で1/16になる。4通りの組み合わせを当て、さらに4通りの組み合わせを当てる、という合計16通りの組み合わせの中から1通りの当たりを引く必要がある。
じゃあ12試合全部を当てる確率はどうなるか?
1/4x1/4x1/4x1/4x1/4x1/4x1/4x1/4x1/4x1/4x1/4x1/4=1/16,777,216
ということで、約1600万分の1ということになる。
1口300円だから、16,777,216x300=5,033,164,800で、約50億円分の数字被りなしのくじを買ったら1個1等が入っている計算になる。
ところが、今回台風で4試合が中止になり、4試合分の結果は当たり扱いになるため、残り8試合の結果が当たれば、1等に当選するという状況が発生したのよ。
そうすると当たる確率は、 1/4x1/4x1/4x1/4x1/4x1/4x1/4x1/4=1/65,536になる。上記と同じように計算すると、65,536x300=19,660,800で、約2000万円分の数字被りなしのくじを買ったら1個1等が入っている計算になる。
1等に当たったらいくらもらえる?
じゃあ1等に当たったらいくらもらえるのか?造船太郎さんが説明している青汁王子の動画によると、キャリーオーバーが58億円あって、今回のくじの売上見込が50億円でうち半分の25億が当選金に使われる、つまり58億+25億=83億円が当選金の原資。
今回は2000万円分の数字被りなしのくじを買ったら1個1等が入っている計算になるので、50億売上があるならまず当たりは出るのよ。
50億/2000万で、250本くらい1等が出る計算になる。83億の70%が1等の当選金分配に使われるので、83億x0.7/250=2324万円が1等1本あたりの分配金見込みになる。
そもそもでいうと、50億円分のくじで83億円の原資を分配することになるので、1等から6等までの全当選金を含めた期待値は83/50=1.66で、なんと期待値がプラスの状態になっている。
競馬の還元率が75%、宝くじの還元率が45%なのに対して、今回のMEGA BIGは還元率166%と、参加者全体としては儲かる(=期待値がプラス)状態な上に、2000万買うごとに1等が1個当たる計算になっていて、さらに1等1個ごとに2324万円がもらえる、という特殊な状況が発生していたことになる。
7000万円突っ込んだときに勝てる確率と負ける確率はどれくらい?
ここまでの話で、大金突っ込んだら期待値プラスで計算上は勝てるし、台風で1等が当たりやすくなっていることも分かった。
ただ、実際にお金を突っ込んだときに勝てる確率と負ける確率はどれくらいなの?というのが実際の意思決定をするときに気になるところよ。
何度か「2000万円分の数字被りなしのくじを買ったら1個1等が入っている計算」と書いたが、実際には数字被りは発生するだろうから、2000万円分くじを買っても、1等が当たることも当たらないこともありうるわけよ。
なので、ここでは数字被りも含めた突っ込んだ金額による勝ち負けの確率も求めてみようと思う。
これは話を単純にするために、1等のことだけを考えることにして、くじを何個買ったら1等が何個当たるのかを考えていく。
まず1個だけくじを買ったときの確率は簡単に求められる。くじの数字の組み合わせは、今回は4^8=65,536通りなので、1等が当たる確率は1/65,536=0.0015%、当たらない確率は65535/65536=99.9984%。
2個くじを買った場合は、1等が2個当たるケースと1個当たるケースがある。イメージ的には、下記のような数字の並びで、特定の数字(=1等)を2回引くケースと1回引くケースがある感じ。
1,2,3,...,65536
1,2,3,...,65536
上記で、例えば1等が65536だったとして、それを2回引く確率は1/65536^2=1/4,294,967,296だが、1回だけ引く確率は、1つ目で引いて2つ目で引かないケースと、1つ目は引かずに2つ目で引くケースがあるので、1(引くケース)x65535(引かないケース)x2(組み合わせの数)/65536^2(総パターン)=0.00305%、1回も当たらない確率は65535(引かないケース)^2/65536^2(総パターン)=99.99694%.
この考え方を拡張させていくと、1000個(30万円分)買ったときに特定の数字(=1等)を1回引く確率は1.5%で1回も引かない確率は98.4%、 1万個(300万円分)買ったときに特定の数字(=1等)を1回引く確率は13.0%で1回も引かない確率は85.8%、10万個(3000万円分)買ったときに特定の数字(=1等)を1回引く確率は33.1%で1回も引かない確率は21.7%で2回以上引く確率が残りの45.2%、20万個(6000万円分)買ったときに特定の数字(=1等)を1回引く確率は14.4%で1回も引かない確率は4.7%で2回以上引く確率が残りの80.9%。
ということで、今回のケースでは、6000万円分以上買うと1等を引かないケースはかなりまれ(=5%未満) になる。
ただ、300万円分程度では1等を引けない確率が85%以上もあるので、大半の我々一般庶民にとっては、どのみち分の悪い賭けだったといえよう。あくまで造船太郎氏は数千万集められたから1等を「ほぼ引ける」ところまで持っていけたに過ぎない。
せっかくなので、7000万円分(きりよく7200万円分の24万個)くじを買った場合の確率を細かく見ていく。
まず1等が1個も当たらない確率は2.5%、1個当たる確率は9.4%、2個当たる確率は17.2%、3個当たる確率は21.0%、4個当たる確率は19.2%、5個当たる確率は14.0%、6個当たる確率は8.6%、7個当たる確率は4.5%、8個当たる確率は2.0%。
先程の計算で1等1個あたりの分配金見込みは2324万円だったので、1等2個までは赤字、3個以上当たれば2等以下の当選金も含めると負けにはならなそうな感じがする。
そうすると、負けになる(1等当選が2個以下の)可能性は29.1%で、約7割勝てる勝負だった、ということみたいね。
ただ、造船太郎氏は実際には1等を8個引いたということなので、2%(8個以上で計算するなら3.6%)しか起きない「稀に見る」引きの強さを持っていたと言える。
結論、めちゃめちゃ金持ってて、めちゃめちゃ引きの強い人がチャンスをものにしただけなので、我々一般人が今回のMEGA BIGに参加できなかったことを後悔する必要はない(数百万程度ではほぼ1等を引けないので負ける)、ということです。