カルチュア・コンビニエンス・クラブ（CCC）と公共図書館の共同運営に取り組んでいた図書館流通センター（TRC、東京・文京区）が、CCCとの協業を見直す方針を明らかにした。すでにCCCに対し、既存の協業関係を解消し、将来的にも協業しない意向を伝えたという。図書館運営においてTSUTAYAを運営するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)との提携を
TRCとCCCは共同事業体として、神奈川県海老名市の図書館運営を受託している。また愛知県小牧市でも図書館の移転・新築計画について、市とアドバイザリー業務契約を結んでいた。だが海老名市立中央図書館が10月、いわゆる「TSUTAYA図書館」としてリニューアルオープンすると、書籍の分類や蔵書などについて問題が噴出。また小牧も住民投票の反対多数結果を受け、市が両社との契約を撤回する方針を明らかにしている。
すでに新図書館の運営がスタートしている海老名で、今後どのように協業を解消するのかについて、TRCは「市、CCCとの3者で十分に協議して決める。すでにTRCが担っている業務については、当面責任を持って続ける」（広報）としている。公共図書館運営の最大手であるTRCは、CCCの何に落胆し、「絶縁」を申し入れたのか？ TRCの谷一文子会長に聞いた（取材は10月中旬に行った）。
解消したTRC(図書館流通センター)の谷一文子会長に取材をした記事。提携解消のニュースは
前に見ていたが、詳細を知らなかったのでこの記事は面白く読めた。
メモがてらまとめとく。
・海老名には中央と有馬の2つの図書館があり、中央はCCC、有馬はTRCが運営
・CCCによる独自分類（ライフスタイル分類）には司書が困惑し、運営、利用者双方の検索利便性を大きく落としている
・ライフスタイル分類は、たとえば著名な作家の食べ物に関する随筆が、料理本に分類されているなど雑な分類
・さらに独自分類の詳細な区分表が開示されておらず、系統立てて理解することが第三者にはできない
・図書館は地域にとって本当に買うべき本は何なのか、一過性でなく長期的な視点で考えなくてはならない
・それは例えば誰でも買える人気の小説よりも、総覧・年鑑や郷土資料を重点的に収蔵するなどといったこと
・雑誌の収蔵で重要なのは、バックナンバーがあること。それなのにCCC運営の中央図書館は収蔵誌数は148誌から50誌に激減させた
う～ん、なるほどね。読んでいてなんでTRCがCCCと絶縁したのかよくわかった。
こりゃつまり、図書館運営は商業主義だと成立しないんだな。特に本選びのスタンスについて、
記事を読んでいてかなり腑に落ちた。
図書館は人気の本よりも、地域が本当に保有すべき本を長期視点で考え選定する必要がある、
ということなんだね。でもTSUTAYAは本屋だから、Tポイントなどの履歴でどの本が人気なのか
という情報は持っているだろうけど、どの本をその地域が持つべきかということを考えられる
人材も視点もないと。
でもTSUTAYAが商業主義をやめるわけにもいかないでしょ。本・CD等のレンタル・販売のトップ企業
なんだから。そうすると彼らの作る図書館がどうなるか。もう既に起きていることもあるけど、
・人気がなくて利用者も限られている郷土資料なんて破棄破棄。利用者増につながらないしね
・雑誌のバックナンバーなんて数ヶ月分で十分。大半の利用者は数年前のものなんて見ないんだからスペースの無駄無駄
・本も雑誌も全国のTSUTAYA書店の売れ筋ランキング順に優先度付けて仕入れときゃいいんだよ。そうすりゃ利用者も増えるでしょ、きっと
・村上春樹やハリーポッターみたいなベストセラー本は大量に仕入れて平積みにしとけば利用者数も貸出数も爆増間違いないね！これで大手を振って利用者数日本一をアピールできちゃうぞ！
・児童書スペース？そんなもの3階だか4階だかの隅っこに設置しときゃいいんだよ。子どもなんか金落とさないんだから儲からないんだよ。1階の一番いいスペースはカフェにしよう。Wi-Fi完備でおしゃれな内装にしてね。これでカフェ使われまくりっしょ
みたいになるよな、そりゃそうだよ。営利企業としては当然の発想だよ。でもこのやり方で図書館を
運営しちゃまずいってのもわかる。利用者を増やすことを第1目標に置いちゃいけないんだな。
それで評価をしてはまずいんだよ、図書館は。
武雄市のTSUTAYA図書館の失敗は、運営ノウハウが足りなかったからではなく、そもそもの
企業スタンスの問題だったんだね。TSUTAYAは本屋としては全然便利でいいところだと思うけど、
図書館を運営してはいけない企業だというのは今回の記事でよくわかったよ。
高木 信孝
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